2018.03.27 UP

【第2回】夜な夜な出没する予土線の怪!

シカ!シカ!シカ!

宇和島発江川崎行き832列車。
真っ暗闇に響くディーゼル音と車輪の漏れる軋みが妙に不気味なうえに、強張った車掌さんは貫通ドアに頭を擦り付けたっきりビクともしない。2両の列車は愛媛県と高知県の県境に差し掛かる。宇和島でほぼ座席が埋まるぐらい居たが今は自分だけとなった。

淡々と走る。人家もなくなり21時を回った。妙に緊迫する運転席。車掌は両手で顔を覆い、前方を凝視し始めた。小さなカーブを曲がったその時、「シカァ!」突如、車掌の大声と何かに迎撃されたショックを感じ緊急停車。
「ヤッタか?」と運転士は列車から飛び降りて確認をするが、幸いにもこの日は何も無く、実に
4回の緊急停止を繰り返して無事この列車の終着となる江川崎駅に。30分遅れだ。ホームに降りると光々と灯っていた車内灯は消され、賑やかだったディーゼルエンジンも切られる。 一気に静寂が駅を包みこむ。

運転士と車掌は明日一番の列車に乗務するために、この駅の宿舎で宿泊する。
業務が落ち着いたとこで、差し入れの缶コーヒーでしばらく立ち話をする。

「この便は車掌が居るから助かるが、ワンマンの時は本当に怖いんだ。あの光る眼が・・・」と怯える若い運転士。
四国でも群を抜いて鹿や猪の出没が多いといわれるこの路線。

予土の夜は獣との攻防だ。

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