- 2018.09.21 UP
【第3回】予土線は新聞もハコビマス!
モノ云わぬ客
宇和島・窪川駅を発車する予土線始発列車は各駅に配る朝刊が積まれている。その新聞を列車から降ろしているところを撮影するために早朝、土佐大正駅に出向くと、数人のオジちゃんやオバちゃんが一番列車ならぬ朝刊列車を待っていた。
前夜から近くの道の駅で張り込みも不覚に眠ってしまい、列車がやってくる2分前にバタバタとホームに駆け上がってきた私に、
「新聞撮りに来たの。アンちゃん変ってるよぉ。」とオバちゃんは笑う。
天気は雨。先ほどまでバケツをひっくり返すほどの強い雨が予土線の線路を叩いていた。いまのところ運転が見合わせたという情報はない。
「今日列車動いてよかったなぁ。運休になったら俺らが車で窪川へとりに行くか、タクシーでもって来てもらうんだ。」と衝撃的な発言をするオジちゃん。
「えっ、窪川からタクシーで!20キロはあるでぇ。」なんちゅう贅沢な新聞なんや。
そして、一両の始発列車が鈍いブレーキ音を立てながら到着。窪川発はキハ32形四国色のディーゼルカー。ちなみに宇和島方の始発列車はあの0系新幹線風ディーゼルカーが担当している!お目当ての新聞は鉄道ファンが真っ先に座るかぶりつき席に鎮座されていた。地元紙・スポーツ誌あらゆる新聞が駅ごとにビニールに入っている。
昔は相当数の新聞の束があったというといい、過疎と新聞離れで年々その量は少なくなっているという。オジちゃんオバちゃんは何束かそれらを列車から降ろすと、そのまま駅を後にするモノ、ベンチで各地域別に仕分けされるモノ。予土線に乗ってきたモノ云わぬ客はそうして配達されていく。
坪内政美 つぼうちまさみ
鉄道カメラマン・ロケコーディネーター他
1974(昭和49年)9月9日生まれ 香川県高松市在住。
幼少のころからの乗り物好きが講じて、現職になる。特に鉄道の知識は幅広く、年がら年中車で全国を走り回っている。そのため観光地や珍スポットをはじめ、離島やさぬきうどんなどに詳しく、これらを生かしてテレビ番組などのコーディネーターも務める。最近では、地方私鉄のイベント企画やアドバイザーを勤める傍ら、地元四国では町おこし列車「どつぼ列車」などの主宰を行っている。いつでもどこでもスーツ姿で撮影するという奇妙なこだわりをもつ。