2019.11.26 UP

熱闘!予土線沿線の餅まき文化

四万十市で2014年に行われたトラック荷台からのもちまき。投げ方が豪快!

予土線沿線には、昔から「餅まき」というイベントがある。

要は、お偉いさんや芸能人、としおとこ・としおんなが裃をつけて神社に設置されたステージから節分祭で豆まきをしているアレを連想してもらいたい。全国的には新築時に行われる「棟上げ」や地域によって゛もちなげ゛は行われている。しかし高知県や愛媛県南西部では昔から何かお祝い事やお祭りがあると必ずと言っていいほど最後の締めは「餅まき」または「餅投げ」という「福」を分け与えるという意味で餅やインスタントラーメン、お菓子などを投げるイベントがあり、これが半端でない。(由来については諸説あります。)

 

高知の餅は当たっても痛くないように、やわらかく、「祝」袋に入っている。

 

四万十町で行われた餅まき。垂れ幕に事前告知がされている。

ばら撒く方も生半可な気持ちで行うと、あとで大変なことになる。まず、餅投げ愛好家の方々の存在だ。この方々は、あらゆる餅なげイベントに現れるという。いつ、どこで、何時からをハッキリ告知していないと、あとで大変お叱りをうけるのだという。また、愛好家さんに限らず、餅の量や投者のバラマキ方、客の量でそのイベント主催者の評価やイベントの評判に直結するのだという。先日プロデュースさせていただいた予土線全通45周年イベントで記念列車は、「しあわせのもちまき号」として走らせ、松丸駅のある松野町と窪川駅がある四万十町で餅まきを実施していただいた。事前に餅の量は聞いていたが、行ってみると明らかに箱の量が増量されていたのである。「どこから予算引っ張ってきたのですか?」と聞くが、「まぁ、お祭りですからね」と担当者さんは笑って餅を投げていた。さて、イベントの評判はいかに

記念列車につけられた愛称も「幸せのもちまき号」と名付けた。

手前のおばあちゃんのダイレクトキャッチが冴える。

一方、拾う方もマナーがあるようで、網など道具を用いての参加は他人を怪我させるのでご法度とされ、大体のイベントでは禁止されている。また広範囲にわたって拾いに行くのではなく、自分の陣地内に投者にアピールし飛び込んできたものを拾うという。先ほど評価の要因となる一つと言ったように投者もまた、近くから遠くまで、またリクエストのあった所にちゃんと餅を投げる動察力とコントロールが要求されるのだ。それにしても渦中にいると凄まじい光景である。大量の餅とお菓子が降り注ぎ、さっきまで杖をついていたおばあちゃんも杖そっちのけで機敏に拾う。しかも持っているスーパーの袋がいっぱいになっているほどの収穫。我先に「福」である餅をふんづけて自分のものとするおっちゃん、ペシャンコになった餅でもご満悦だ。

そんな修羅場と化し、多少の乱闘もあるイベントも最後は拍手で和やかに終わると、取れなかった観光客や子供に見ず知らずの人が餅を分け与えている光景があちこちで見られる。おもてなしの文化が根づいている四国ならではの風景である。

みんな真剣。だけどどこか楽しそう。(四万十市・江川崎駅前) 

もちまき号バックになんとステージがホームの上から!(松野町・松丸駅前)

たかがモチマキ、されど餅まき。ぜひ毎年予土線で行われる゛観光開き゛には、地域伝統の餅まきを恒例にしてもらいたいと思う。

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