予土線に乗って旅にでた vol106

夏だそうめんが食べたい!!

旅人 宮川裕美

蝉が鳴く。ジージーと鳴く。
夏だ!本格的な夏がやってきた。
夏といえば、そうめん!!そうめんが食べたい!!!
ということで、予土線に乗ってそうめんの旅に出よう!!

夏になると、南予地方のあちらこちらで「そうめん流し」なるものが登場する。湧き水とともにU字のレーンを流れてくるそうめんを箸ですくって食べるのだ。ああ、私はそうめん流しを愛してやまない。むしろ、そうめん流しのために夏があるようなものだ。それはさておき、予土線圏域でもある宇和島市と鬼北町には3カ所もそうめん流しをする場所がある。実は、どこも予土線の駅からは遠い。よおし、いっちょ予土線とバスを乗り継いで行ってみるか。

務田駅を過ぎると霧が沿線に立ち込める。このあたりならではの幻想的な光景

務田駅を過ぎると霧が沿線に立ち込める。このあたりならではの幻想的な光景だ。

思い立ったが吉日。夏休み恒例のラジオ体操で寝ぼけた体を目覚めさせ、午前7時24分、宇和島発の列車に乗り込む。今回目指すのは、鬼北町小松にある『安森洞そうめん流し』だ。最寄り駅はといえば、出目駅だろうか。とはいえ、出目駅からもけっこう遠いぞ、と思いながら車窓を見ると、夏真っ盛りの田んぼには稲が青々と萌えている。もう稲の先には稲穂がたわわになっているではないか。このあたりではお盆の時期には収穫が始まる。夏の終わりには新米が食卓に並ぶのだ。出目駅からはバスの接続が難しそうなので、近永駅で降りることにした。

国道320号線を三間川・広見川沿いに走ってゆく

国道320号線を三間川・広見川沿いに走ってゆく。

国道からの分岐地点にある看板が目印

国道からの分岐地点にある看板が目印。
ここから山道が続く。

午前8時1分。近永駅に到着した。ここからはバスで行くしかない。と、バス停に目をやるとなんということだ。12時台までバスがないではないか!これは一大事。うっかりしていた。もし宇和島を6時台の始発列車で出発していれば、近永駅に6時39分着、7時28分に出発するバスに間に合ったというのに・・・。いわゆる日吉線のバス路線は本数が少ない。 しかたがない、こうなりゃタクシーで。メーターで5000円ほどという。運転手さん、いってくだせえ!!!

午近永駅から安森洞まで18キロ。そもそも最寄りのバス停は小松橋であったが、そこから4キロ山を登る。逆にタクシーでよかったのかもしれない。安森洞まで自家用車で行くのが主流だもの。うねうねした坂道を登りながら、「あと○キロ」と書かれている看板に期待が高まってくる。夏だけの限定とはいえ、コロナ禍でこの数年はごぶさたしていた。

安森洞そうめん流しに到着

安森洞そうめん流しに到着。
タクシーの運転手も折角来たからと食べていった。

到着すると、川のせせらぎ、蝉の声。寝起きに聞いたあの蝉の音と何が違うのか。ここで聞く蝉の音は風情でしかない。標高360メートルというこの場所で、そうめん流しを運営しているのは、地元の保存会のグループだ。40年あまり続いている。多いときには1日に800人来たこともあるのだとか。到着が開店前だったことから、準備しているようすを見させてもらった。「もうちょっと待ってね」と優しいお母さんたち。こちらこそ、開店前に来てしまってすみません。大きな鍋でそうめんを湯がくそばで、たらいには湧き水がごうごうと流れ込んでいる。ゆであがったそうめんをたらいでざぶざぶと洗う。そうめんは踊るように冷水を浴びている。なんとも気持ちのいい光景だ。てきぱきとざるにあげて、食べやすいようにくるっと手のひらサイズにまとめる。このバックヤードと客席は竹でできた壁一枚があるだけで、お母さんたちはその竹と竹の隙間からお客さんの様子を見ながら、そうめんを流すのだという。そうめんつゆももちろんオリジナルの調合。青ネギに、シソ、タマネギなど薬味もすべて地元で育てたものを使う。グループの会長を務める程内覚さんは、コロナ禍でも楽しんでもらおうと、感染対策を考えた。直接箸ですくうのではなく、ある道具を使うことを思いついたという。

湧水で一気に冷やす

茹でたそうめんに安森洞からの湧水で一気に冷やす。

ぬめりを取ってゆく

そして丁寧に流水で麺を洗い
ぬめりを取ってゆく。

絶妙なタイミングで流す

手慣れた手つきで一口大に分けて
客の様子を伺いながら絶妙なタイミングで流す。

竹の食器には薬味が、茶こしですくって食べる

竹の食器には薬味が、茶こしですくって食べる。
出汁は少量注ぎたすのがコツ。

安森洞そうめん流し

北宇和郡鬼北町大字小松
電話 0895-48-0830※オープン期間中のみ
営業時間
7月9日~8月21日
午前10時~午後3時(※2022年夏の予定)
料金 大人600円、小人300円、幼児200円
HP https://www.town.kihoku.ehime.jp/site/kanko-e/3.html

こ、これは!茶こしではないか。ちょうどそうめんを流すレーンの幅に合う大きさの茶こしだ。レーンに流れてくるそうめんを茶こしですくい、まるでラーメンの湯切りのように手首を使ってちゃっちゃっと水を切る。薬味はこれまで取り放題であったが、甘く炊いた椎茸やミョウガも加わり、竹の容器に一人前ずつ提供してくれる。(薬味のおかわりは100円でできる)やっぱり私はここのつゆが好きだ。ほんのり甘くだしのきいたつゆ。あ~うまい。これですよ、日本の夏は!こんこんと湧き出でるキンキンに冷えた水とともに流れてくる真っ白なそうめんよ。茶こしですくうなんて、まるでアトラクションのようでおもしろいではないか。もういくら食べたって後悔しない!いくらでも食べちゃう!!

これはうまし!でも入れ方を間違えると大惨事!

安森洞そうめん流し

北宇和郡鬼北町大字小松
電話 0895-48-0830※オープン期間中のみ
営業時間
7月9日~8月21日
午前10時~午後3時(※2022年夏の予定)
料金 大人600円、小人300円、幼児200円
HP https://www.town.kihoku.ehime.jp/site/kanko-e/3.html

満腹になった私の次なる目的はニジマスである。安森洞そうめん流しといえば、ニジマスの釣り堀があるのがたまらない魅力である。釣り竿を200円で借りられる。ニジマス釣りは、なんと入れ食い!この日は、家族連れやちびっこたちも大勢来ていて、もうきゃあきゃあにぎやかなこと。えさを上手に針につけて、池にえいやっと投げる。すると、すぐにえさにニジマスは食らいつき、ひょいっと釣れるのだ。ほほう、みなどんどん釣りあげていく。釣った分は、必ず持って帰るのがお約束なのだが、土日祝日はその場で焼いてくれるのがまたうれしい。ささっと内臓を取り除いて、塩をふって、炭火で焼くのだ。この大自然の中で味わうニジマスはまた格別。あんなにおなかいっぱいそうめんを食べたというのに、ニジマスだけは別腹である。「はい、いっちょあがり~」と焼き上がったら教えてくれる。ほくほくの身を頬張る。もう何匹だって食べちゃう!!

池には川魚がウジャウジャ!この日は入れ食いで釣れる

池には川魚がウジャウジャ!この日は入れ食いで釣れる。

私でも釣れたど― 釣り過ぎ注意

私でも釣れたど― 釣り過ぎ注意!

早速塩焼きにしてもらいました。これもうまし

早速塩焼きにしてもらいました。これもうまし!

店奥にある洞窟は無料で入ることができるが、サンダルが必要だ。

店奥にある洞窟は無料で入ることができるが、
サンダルが必要だ。

釣り堀の近くには洞窟があり、自由に探検することができる。御在所山の中腹にある「安森鍾乳洞」に続く洞窟だ。地元の人たちが掘ったという。70メートルほどだが探検気分を味わえるではないか。ヘルメットをかぶって、いざ探検だ。ワクワクしながら進むと、奥の方からひんやりとした空気が漂ってくる。中はひときわ別世界である。地元の人いわく、ことしはコウモリが大量の赤ちゃんを産んでいるのを見たという。どんどん奥へ進むと足下には水が流れてきている。この湧き水があのそうめんを流している水なのだ。これは地域の宝だ。足をつけてみるとその水の冷たいこと!!足がみるみる冷えていく。さ、寒い。真夏の日差し降り注ぐ下界とは比べものにならない天然の冷蔵庫である。

もう熱い下界には帰りたくない!と思いつつも、来たからには帰らねばならない。思い切ってちょっと歩いて下界まで下りてみようか。上りはきついが、下りならなんとかなろうと、私はバス停までの4キロを歩いてみた。

行きにタクシーでみた看板

行きにタクシーでみた看板
手書きと云うのがいいね。

裏を見ると「またあいましょう」の文字

裏を見ると「またあいましょう」の文字が、
来年もきますね。

洞窟でのひとときが幻であったかのように歩き始めて間もなく滝のような汗が出る。しかたがない。夏だもの。沿道には、鬼北町の特産品であるキジを飼っている小屋も見える。小屋の中のキジと目が合う。こんな山あいの自然豊かな場所で君たちは育てられているのか、おいしいお肉になるはずだと心で納得した。2キロほど下ったところに、手作りの看板があった。「またおあいしましょう」と。もちろんです、また来ます!!とすぐにでも引き返したくなるような気持ちでいっぱいです!!

午後1時49分、汗を拭いながら「小松橋」からバスに乗り込んだ。25分で近永駅に到着した。時刻表を見ると、あと30分ほどで列車があるではないか。松丸駅まで行ってひとっ風呂浴びてくるとしようか。

予土線唯一の駅中温泉「ぽっぽ温泉」に入る。夏の暑さにもかかわらず、やっぱり風呂はいいもんだ。ゆったりと湯船に浸かり、時折駅に停車する列車の動く音を聞く。蝉も遠くで鳴いている。ああ、極楽極楽。遠くへ行かずとも、たっぷり地元で夏とそうめんを堪能した一日であった。。

最寄りのバス停

最寄りのバス停。
ちゃんと屋根もあって、突然の夕立も大丈夫だ。

帰りも予土線に乗って宇和島へ

帰りも予土線に乗って宇和島へ…

森の国ぽっぽ温泉

北宇和郡松野町大字松丸1661-13
電話 0895-20-5526
営業時間 午前10時~午後10時(午後9時半札止め)
料金 大人(高校生以上)520円、65歳以上420円、小学生以下無料
HP http://poppoonsen.com/

旅の行程
  • 07:24
    宇和島駅を出発(予土線)
    08:01
    近永駅に到着 タクシーで安森洞へ(5000円程度)
  • 10:00
    安森洞でそうめん流しとニジマス釣り、洞窟探検
    4キロ歩いてバス停へ
  • 13:49
    小松橋バス停から乗車 ※日曜、祝日は運休
    14:14
    近永駅前に到着
  • 14:45
    近永駅から予土線に乗車
    14:55
    松丸駅で下車 ぽっぽ温泉へ
  • 16:36
    松丸駅から乗車
    17:23
    宇和島駅に到着
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