個性的な3列車を一日で全部乗る!でも、そうは問屋がおろさない?
秋の足音が聞こえる10月初旬の旅のことです。
「予土線3兄弟に1日ですべて乗る旅に出よう!」と“鉄ちゃん“まるだしの提案をしたのは、協議会のアドバイザーを務める「どつぼさん」こと鉄道カメラマンの坪内さん。
『予土線3兄弟』とは、日本で初めてのトロッコ列車となった“長男”こと『しまんトロッコ』、フィギュア界を牽引する海洋堂が四万十町・JR四国とコラボした “次男”こと『海洋堂ホビートレイン』、そして、あの団子鼻の0系新幹線を模してしまった“三男“こと『鉄道ホビートレイン』のことです。それぞれ違う時間に運行されていることから、ダイヤをうまく組み合わせれば、3兄弟すべてに乗ることが可能なのです。なるほど、鉄分の濃い一日の始まりです。旅に同行するのは、協議会のメンバーで四万十町の金澤さん、四万十市の高橋さん、言い出しっぺのどつぼさんとそして(前回同様)書き手のわたしの4人です。台風が過ぎ去った朝、宇和島駅からいざ出発です!
ところが、いきなり壁にぶち当たりました!なんと次男の海洋堂ホビートレインは、本日緊急の車両点検のため、整備工場のある松山に朝早く連れて行かれてしまい不在!!一日1往復のみの運行ですから、これに合わせて旅に出ようと計画していた、わたしたちは出鼻をくじかれ、早くも「1日で3兄弟すべてに乗ろう」は実現不可能となりました・・。
とはいえ、どつぼさんの考えたスケジュールでは、見事に予土線3兄弟を制覇できることから『海洋堂ホビートレイン』を一般車両である『キハ32形』に置き換えて旅を実行することにしました。
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朝、衝撃的なアナウンスが宇和島駅に流れた。
『海洋堂ホビートレイン』は、車両にカッパがたくさん描いていることから別名『カッパうようよ号』と呼ばれ、鮮やかな赤と緑の派手なデザインです。予土線沿線に残るカッパ伝説にちなんでいるのですが、なんと車内にはおしゃべりする親子のカッパが鎮座していたり、海洋堂が手がけたフィギュアでカッパの暮らしを再現したジオラマがあったり、カッパ好きにはたまらない(?)仕掛けを施しています。
この日は台風の影響もあり、カッパさんのピンチヒッターを務める『キハ32形』は30分ほど遅れての出発となりました。宇和島駅を出てすぐ、次の北宇和島駅では、土砂降りの雨に加えて、たびたび突風が吹き付けていました。さらに、務田駅に向かう予土線の最大の急勾配を走っていると、いきなりの急ブレーキ。我々の行く手を阻むように横たわっていたのは長さ1メートルほどの倒木です!車内は一瞬ざわめきました。しかし、ワンマン列車の運転士は慌てることなく、速やかに列車からひょいっと線路に降り立ち、エイヤ―っと倒木を取り除いたのです。そして、運転席に戻り、帽子をかぶり直してたちまち運転再開となったのです。(カッコいいー!!)でもここは、急勾配の線路の上。車でいう坂道発進をしなれけばならず、空転(車輪の空回りのこと)やエンストを起こさないようにジワリジワリと加速し、無事約6kmある勾配を克服したのでした。そわそわしながら先行き不安なわたしたちをよそに、列車は松丸駅に到着です。ずいぶんヒヤヒヤしたことから、ぬくもりを求めて一目散に駅前の足湯を目指しました。・・・チャポン。湯はほかほかで足をつけていると、しだいに体も心も温まり、さっきまでのソワソワやヒヤヒヤはすっかりなくなっていました。
「森の国 ぽっぽ温泉の足湯」
〒798-2101 愛媛県北宇和郡松野町大字松丸1661-13
電話 0895-20-5526
駅前にある無料の足湯。10~17時まで。正式温泉名は大門温泉といい、アルカリ性冷鉱泉の湯に入れる。神経痛、筋肉痛、冷え性に効能がある。また駅には日帰り入浴施設もある。
そして、いよいよ3兄弟の長男「しまんトロッコ」に乗車です。ほっとしたわたしたちに、次に襲いかかっていたのは空腹という名の悪魔でした。腹が減っては、旅の景色もぼんやり見えてくるようだな~なんてぼんやりしていると、30分ほどで江川崎駅に到着しました。トイレ休憩とともに待ち構えていたのは、なんと車内販売です!土日祝のトロッコ運行日には、江川崎駅から土佐大正駅まで、「山間屋」さんが同乗してくれることになっているのでした!地域のブランド米「山間米」で握った栗の入ったおむすびや四万十牛のハンバーガーなど、腹ペコのわたしたちには垂涎もの。しっかりとお買い上げ、トロッコ列車から見える絶景とともに、この地元自慢の食を満喫したのであります。もぐもぐ。
くねくねと蛇行する雨の四万十川は、“キャラメルラテ”のように薄茶色に濁っていましたが、雨の日限定の「増水していまにも沈んでしまいそうな沈下橋」や「雄大な川面を立ち上る川霧」も見られました。思えば、国鉄時代に日本初のトロッコ路線として予土線にこの車両が投入されたというのですから、この景色に惚れ込んだ人びとも少なくないはずです。トロッコ初乗車だという高橋さんもトロッコからの車窓は、「自動車で毎日見ている景色とは、またひと味違っていいですね」なんて楽しんでいらっしゃいました。
江川崎駅で約20分の停車。記念撮影しました。
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沿線の沈下橋もごらんの通り。
通行は危険です。
土佐大正駅で下車し、トロッコ列車を見送った後、まだまだお腹に余裕のあるわたしたちは駅の近くで昼食をとることにしました。金澤さんが、「土佐大正に来たなら絶対に『みたに食堂』に行きましょうよ!」と強気に推すもんですから、その勢いにつられ、駅からてくてくと歩いて行くことにしました。わずか200メートル先にある『みたに食堂』。この山深い土地で、なんと鮮魚店を併設しています。赤いのれんをくぐると、昭和の雰囲気プンプンの情緒豊かな店内。常連さんと思しき人々であふれかえり、子どもからおじさんまで、みなこぞってラーメンを食べていました。わたしたちは迷うことなく、「おかみさん、ラーメン4つ!」。程なく、やってきましたラーメン。鰹がきいた甘めのスープ、なんともやさしい。さらに鮮魚店ならではの新鮮なサンマの刺身とカツオのタタキまで食べてしまいました。お品書きの“焼きそば”も“オムライス”も気になりますが、それはまた今度。ごちそうさまでした。
「みたに食堂」
〒786-0301高知県高岡郡四万十町大正515
電話 0880-27-0009 営業時間 特に決まっていない
鮮魚店に併設された昭和レトロの香りがプンプンする大衆食堂。なんといっても鰹のたたきは絶品。お皿でなく、トレーのまま出てくるところが食欲をそそる。ただ、鮮魚店の状況で開店・閉店を決めているので、営業時間・定休日は決まっていないという、ある意味運まかせな店。行く前には一度電話確認をした方がいい。
そして、心もおなかも満たされたわたしたちは、土佐大正駅に戻り、いよいよ三男こと『鉄道ホビートレイン』に乗車しました。この車両は、東海道新幹線開通50周年と予土線全通40周年を記念し、国鉄総裁だった愛媛県出身の十河信二氏へのオマージュとして4年前に誕生しました。運行開始のころ、そのユニークな風貌の四国の“新幹線”を一目見ようと、全国から多くの人が訪れ、乗車率が120パーセントになったこともあるほど。車内には歴代新幹線の模型が飾っていたり、東海道新幹線の駅名が書かれた料金表があったり、さらに当時使われていた本物の0系新幹線の座席が4人分鎮座していて、なんとその座席は自由席ですから早い者勝ちで座れちゃったりするんです。随所に鉄道ファンがわくわくするような“新幹線”ぶりが見られますが、予土線では最高時速は90キロほどなんですよね。
だんだんと空が暮れていき、終点の窪川駅に到着しました。乗客が改札に向けてホームを後にする中、ここでどつぼさんが言うのです、「まだホームでイベントが残っていますよ」と。しばらく待っていると運転士が“新幹線”の団子鼻に大きい下敷きのような赤い板を差し込んだのです。さっきまで、ヘッドライト(前照灯)だった団子鼻は、折り返し運転ではテールライト(尾灯)になるのです。なるほど、車体の向きを変えずに宇和島と窪川の間を行ったり来たりしているこの“新幹線”は、アナログな方法でライトの色を変えているんですね。運転士さんの知られざる運転前のひと手間。なんともこれは、見逃せない予土線限定イベントでした。
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窪川駅に向けて快走する鉄道ホビートレイン。
今回の旅は、3兄弟に乗ってみようとしたけれど、ヒヤヒヤしたり、ほっこりしたり、知っているようで知らないことに出会ったりしながら予土線を満喫したことは間違いありません。鉄道は生活の交通手段でもありますが、強烈な個性を放つ3兄弟は予土線に何度も足を運んでもらえる観光ツールにもなっているのではないでしょうか。今度こそ、完全制覇リベンジの旅に出かけてみようと心に誓うのであります。オワリー。
今回の旅スケジュールはこちら
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- 09:39
- 宇和島駅発「海洋堂ホビートレイン(キハ32形に変更)」に乗車。
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- 10:24
- 松丸駅にて下車。→駅前の足湯につかってほっこり。
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- 11:15
- 松丸駅発「しまんトロッコ」に乗車。
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- 11:41
- 江川崎駅から車内販売開始。
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- 12:54
- 土佐大正駅にて下車。→地元で人気の食堂でまんぷく。
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- ★13:54
- 土佐大正駅発「二度目の海洋堂ホビートレイン」に乗車してもよし。
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- ★14:20
- 江川崎駅にて下車。→近くの道の駅で季節のデザートでまったりしてもよし。
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- ★15:40
- 「しまんトロッコ宇和島行き」を江川崎駅周辺にて撮影もよし。
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- ★16:52
- 江川崎駅発「鉄道ホビートレイン」に乗車もよし。
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- 17:23
- 土佐大正駅発「鉄道ホビートレイン」に乗車
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- 17:50
- 窪川駅にて下車。→方向転換する鉄道ホビートレインの秘密を見学。
※★部分は、原稿に反映していませんが実現可能なプランです。