2021.12.28 UP

夏、ヒーローにときめく

この夏、雨上がりのJR窪川駅で私はあのヒーローに遭遇した・・・。
あのグレーと赤の体躯には見覚えがある。
そう、あれはM78星雲のかなたからやってきたウルトラマンではないか!!!

駅長とウルトラマン夢の出発式が窪川駅で実現した。 撮影・坪内政美

出発する子供たちに手を振る 撮影・坪内政美

2021年7月22日、予土線に「ウルトラトレイン号」なるものがお目見えした。この日は運行初日を記念して出発式がおこなわれたのだ。予土線を走るキハ32には、歴代のウルトラマンがずらっと描かれており、どんな怪獣もやっつけてしまいそうなデザインとなっている。まさか予土線にウルトラマンがやってくるなんて!私は歴史的瞬間を目撃したことで大興奮の1日が始まった。

海洋堂ホビートレイン ウルトラトレイン号

高知県の予土線利用促進対策協議会と大阪市を拠点とする大手フィギュア製造メーカー「海洋堂」と、円谷プロが連携して誕生した。今回、海洋堂はウルトラマンシリーズを1980年から絶えず製作しているということから「海洋堂ホビー館四万十」開館10周年とウルトラマンシリーズの放送開始55周年を記念して運行。ホビー館では「海洋堂ウルトラマンフィギュア展」も2022年5月30日まで開催中。

海洋堂と予土線

高知県出身で「海洋堂」の創始者である館長の宮脇修氏が高知県四万十町に「へんぴなミュージアム」として、「かっぱ館」と「海洋堂ホビー館四万十」を設立したのが2011年。最寄り駅となるのが5キロ先の打井川駅ということで、海洋堂のラッピング列車を予土線で運行させており、沿線地域に鉄道ファンだけでなく、世界中のフィギュアファンも呼び込む起爆剤となっている。へんぴながらも、海洋堂が造形作家らと生み出したフィギュアの宝箱と予土線は結ばれているのだ。

ウルトラマンは、地球に滞在できる3分を超えてもなお、予土線を盛り上げるために駅長と並んで出発進行の合図までやってくれたのだ。列車に乗り込んでいた親子は窓から乗り出してウルトラマンに手を振っていた。ウルトラマンもまた優しく手を振り返してくれた。なんと平和なひとときであったことか。

さらに、この日の午後、「海洋堂ホビー館四万十」にてウルトラヒーローショーなるものも開かれるという。海洋堂と円谷プロがタッグを組むとこんなビッグイベントまでも実現してしまうのか。齢40にもなりながら、私はその“ヒーローショー”というキーワードにときめきを覚え、一目散に会場へ向かった。

1985年、私が5歳だったころ、当時は共働きでなんとか生活を切り盛りしていたうちの両親は、お金のかかる遊び場に連れて行ってくれたことはほとんどなかった。山や川、海などはちょこちょこ連れて行ってくれたものの、デパートでお買い物なんぞほとんど行ったことはなかった。そんな幼少期にとてつもなくときめいた記憶がある。それこそがヒーローショーなのだ。ちょうど北宇和島駅から近い場所にショッピングセンターなるものが登場し、週末ごとに様々な集客イベントが行われていた当時、屋上だったか駐車場だったか、記憶はあいまいだがなんとそこでヒーローショーが開かれたのだ。無料ということもあり、珍しく両親が連れて行ってくれた。やってきたのは、「電撃戦隊チェンジマン」だ。ドラゴン、グリフォン、ペガサス、フェニックス、マーメイドの5人の戦士だ。テレビで見ていたヒーローたちが、目の前に現れ、敵を倒す。途中、敵にやられそうになると、「みんな力を貸してくれ」と観客に応援を求める。すると会場は全員でヒーローに声援を送り、その声を力に変えてパワーアップし、敵を倒すのだ。そのかっこよさといったら!両親に当時の話を聞くと、そのショーにすっかり心を奪われ、とりわけブルーのペガサスに夢中になり、自ら写真を撮ってほしいと、父にせがんだという。いつになく積極的だったことから父はカメラでしっかりとそのときの写真をおさめてくれた。今でもその写真を見るだけで、その時のどきどきを思い出すほどで、テーマソングを聞くだけでまた大興奮なのである。

ヒーローショーなんて何年ぶりだろうと、ワクワクした気持ちのまま私はヒーローの登場を待っていた。雨雲は去り、次第に日が差し込んできた会場に「ウルトラマントリガー」が現れた!最新のウルトラヒーローである。がしかし、私は「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」で記憶が停止してしまっている。あまりなじみがないヒーローじゃないか!などと一瞬思ってしまったものの、心配ご無用。やはりヒーローはかっこいいのだ。造形もさることながら、動きがすばらしい。ちびっこたちを見ると、もう釘付けなのだ。テレビから飛び出してきたヒーローが目の前にいるのだから。さらにトリガーの登場のあとに出てきた怪獣は、なんとウルトラセブンに登場していた怪獣たちではないか!!急に親近感のような親しみを感じてしまう。にくい演出をするではないか。ちびっこだけでなく、お父さんたちまで「あ、ガイロスや!」「あれはパンドンじゃないか」と大騒ぎ。かつてウルトラセブンを見ていたお父さん世代なら知っている怪獣だ。世代を超えて楽しめるなんて最高だ!

テレビでは、セブンがやっつけたはずの怪獣たちは思いのほか強力で、苦戦を強いられるトリガー。このままではやられてしまう・・・そんな!!「みんなウルトラマントリガーに力を貸して!」と会場に向かって叫ぶお姉さん。ウルトラマントリガーはわれわれの正しい心のエネルギーでパワーアップするというが、しかし、新型コロナのため大声は出せない。エネルギーを送るには、手を前に突き出すか、思いっきり拍手をするしかないという。さもなくば、悪い怪獣はますます大暴れしてこのままでは地球が乗っ取られてしまう!いかん、これは力の限り手を突き出さねば、力の限り拍手をせねば!!私はちびっこといっしょになって必死で手をたたいた。ふと見渡すと、ちびっこに負けず劣らずお父さん世代も拍手しまくっている。会場のボルテージはみるみる上がっていき、ついにウルトラマントリガーは怪獣をやっつけた!!もうすっかりトリガーのとりこである。見上げると空には雲一つなく、すっかり晴れ渡っていた。なんてすがすがしいんだ!!

明るい気分で帰路につくと、すっかり日が暮れていた。まさか予土線で1日中ヒーローを感じることができるなんて。日常でこんなにときめきをくれたヒーローはやっぱりすごい!次はどんなヒーローに出会えるのか・・予土線にまた来てくれないかな。

パンドン(ウルトラセブン第48話「史上最大の侵略(前編)」、第49話「史上最大の侵略(後編)」)

ゴース星人が地球侵略のために送り込んできた怪獣で、左右対称の2つの顔を持ち、鳥のような2つのくちばしから火炎を放射して攻撃してくるのだ。ウルトラセブンのアイスラッガーも叩き落として踏みつけるなど苦戦を強いられた。

ガイロス(ウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」)

なんと地球で誕生した怪獣で、ウルトラセブンと水中戦を繰り広げた。タコに似た造形で毒の入った吸盤が最大の武器である。海を渡る船を次々と襲いかかることからウルトラセブンにアイスラッガーで触手を切断されて敗北した。

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