2018.06.01 UP

「ヒデキにあこがれて…」

かつて「ザ・ベストテン」という日本のお茶の間を賑わせたテレビ番組で、予土線の真土(まつち)駅から近藤真彦ことマッチが登場したこともあるとかないとか。この真意は定かではないが、駅周辺の人々からマッチの目撃情報はいまだにあったりするのである。かくいう私も何を隠そう「ザ・ベストテン」の熱狂的な子ども視聴者だったわけで。

先日、スーパースター・ヒデキこと西城秀樹が天国にいってしまった。「ザ・ベストテン」でその姿を一目見たその日から私は、ヒデキのとりこだった。そのセクシーな歌声で熱唱する姿に子どもの私は釘付けである。びらびらとたなびく袖付きのハデハデな衣装に包まれ、もしゃもしゃの髪の毛を振り乱して歌うヒデキはかっこよかった。あこがれた。とりわけ、あのもしゃもしゃのロングヘアーが大好きだった。私はちんちくりんで、もしゃもしゃのくせっ毛が子どもながらにイヤでたまらなかった。でもヒデキを見てから、髪を伸ばしたくて、前髪が目にかかりそうになっても、後ろ髪が肩まで伸びても決して切ろうなどと思わなかったのだ。しかしである。現実は厳しい。スーパースターなんてちょっとも関心のないうちの母親は、すぐに私を散髪に連れて行こうとするのだ。イヤダイヤダとだだをこねても、「みっともない」だとか「すぐに伸びる」だとかしょうもないことを言い出すのだ。反抗し続けると、おやつを買ってくれなかったり、晩ご飯にハンバーグを作ってくれなくなったりするので、仕方なく散髪に行く。やっぱり、ヒデキの髪型にあこがれている私の気持ちなどわかってくれない母親と美容師のおばちゃんは、定番のおかっぱに仕上げてしまうのだ。私はくせっ毛なのだから、おかっぱにしてもすぐに髪の毛がくねくねしてきて、もしゃもしゃになるのだ。ヒデキのように手足も長くないし、せめて髪型くらい真似したかったのに。結局、散髪したことを激しく後悔した私は、お風呂上がりにもしゃもしゃの短くなった髪を見て、「お母さんのバカ!!」と泣き叫んでいたのであった。

高校生になって予土線で通学していたころ、もう散髪も自分の意志ですることができるようになった。そう、ついにヒデキの髪型を再現できる!と思っていたが、私が通った高校は、『前髪は目にかかってはいけない』、『肩にかかる髪はゴムで結んでまとめる』など髪型に厳しい校則がまかりとおっていたのだ。おかっぱとそうは変わらない非常に退屈な髪型で高校に通い、卒業し、社会人となったいま、ヒデキとはほど遠く、私はちんちくりんなままで、ただのもしゃもしゃヘアーを毎朝なんとかヘアーセットで抑えて仕事に行くのであった。

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