- 2018.12.19 UP
「雪だ!雪だ!と予土線ではしゃぐわたし」
気がつけば、もうすぐ冬がやってくる。冬の予土線はなかなか強い。雨が降るとよく運転を見合わせている予土線だが、雪が降ると国道や県道が凍結しているにもかかわらず、予土線はとっとこと平然と運行している…なんてこともよくある。わたしは特に雪の日が大好きで、雪が降った日はそわそわしてうずうずして、家の中にはひとときもいたくなくなり、外へ飛び出すのだ。そう、白銀の中をゆく鉄道の魅力といったら!!
白銀の世界というのは、ここ四国では日常的に見られるものではない。しかも、夜中にしんしんと降った雪も、夜が明けて日が差し込み始めたら、日当たりのいいところなんてあっという間にとけてなくなってしまうのだ。だから雪の日の朝だけは、普段はねぼすけのわたしも、夜明けとともにパチクリ!お目覚めである。
もちろん職業柄、気象状況をニュースで知らせるために、雪の日の朝は仕事用のカメラを持って取材をしなければならない。(みなさんが見ている気象ニュースの映像は、その地域にいる記者カメラマンが撮影しているのだ!)宇和島を出て、車でのろのろと高知方面へ走る。すると田んぼがすっぽりと雪に覆われて“にわか大雪原”となっている場所、大内駅と深田駅の間あたりを一両編成のキハ32が時速40キロ程度で学生や通勤客を乗せて走っている。その姿にはっと息をのみ、ほんのちょっと見とれて、「あわわ」と声を上げて車を道路脇に止める。雪に覆われた大地は、いつもより静けさを増していて、ディーゼルの音が遠くからだんだんと近づいてきて、そしてまた遠ざかっていく。もうこの風情というのは、顔にあたるきんきんの冷たい風なんてまったく気にもならないほどたまらなくいいのだ。列車の動きに合わせてカメラを向けるのが楽しくて、ダイヤに合わせてちょこちょこ移動しながら、今度はどんなアングルで撮ろうかなんて、仕事なのか趣味なのかもうわからなくなってしまっている。一年で一番、仕事と趣味を混同させている瞬間である。
ところが吹雪いてくると、こんなのんきなことを言っている場合ではなくなる。1メートル先が真っ白になり、まったく見えない。風も雪も強くなってくると仕事だ趣味だのレベルではない。待避するしかない。こうなってしまえば、予土線だって運休せざるを得ない。しかたなく、宇和島駅まで戻り、運行状況を見守る。ちょうど宇和島運転区のそばの跨線橋から、駅と車両基地が両方見渡せるのだが、そこに留め置かれた列車たちが吹雪に耐えているさまは、これまたわたしの好きな冬の鉄道風景の一つである。「ごめんちょっと今日は無理」と言わんばかりに、じっと動かないで厳しい冬の自然を耐える列車たちがいとおしくさえ感じてくるのだ。線路からは、人けもなくなり、いよいよ吹き付ける雪と風だけになると、あたりはしーんと静まりかえる。吹雪が去るのを待つしかない、そんな瞬間を見届けるのもまたたまらなくいいのである。
春も夏も秋もいろいろな鉄道風景を織りなす予土線ではあるが、冬こそわたしが最も鉄路のそばに暮らしていてはしゃぎ回る季節なのだと言える。