2019.11.26 UP

「闘牛」のあるまち、うわじま

宇和島駅から北宇和島駅へ向かう途中、宇和島運転区の近くにある線路のそばで、こんなものを見たことはないだろうか。


闘牛の番付表は宇和島の名物のひとつ(撮影・坪内政美)

これは、闘牛の対戦表である。宇和島には、闘牛という文化が根付いている。その始まりは、鎌倉時代とも江戸時代とも言われているが、娯楽として、農閑期の農村で飼っていた牛を強くさせるために戦わせたのが始まりだとか。現在闘牛が残っているのは、宇和島を含め、全国で9か所のみである。宇和島では、正月や盆など年5回の定期闘牛大会を開催していて、会場はJR宇和島駅から見える小高い丘にあるドーム型の建物である。


闘牛場全景。独特な雰囲気と匂いにテンションが上がる(撮影・坪内政美)

実は、予土線沿線は闘牛の生息地。とはいっても、あの厳つい牛が野放しでうろついているわけではなく、宇和島市、松野町、四万十町あたりでは、牛主さんが闘牛たちを大切に育てているのだ。闘牛の体重はおよそ1トン。闘牛大会に出場するために、牛たちを鍛えるのだが、ここでびっくりするのが牛たちのお散歩である。お散歩は、足腰を鍛えるために欠かせないのだが、牛主さんにひかれて牛たちが歩いているのは一般の道路なのだ。山道ももちろん歩くそうだが、普通に道路をゆっくりゆっくりあるく姿に遭遇すると、そりゃあびっくりするでしょうよ。わたしが知っている闘牛「仁王(におう)」は、隠岐の島からはるばる宇和島にやってきたということで、牛主さんは隠岐の島の民謡を流しながら散歩に出かけていた。「牛もふるさとが恋しいじゃろうからの」との親心。穏やかに歩を進める牛の姿からは、闘いをする猛々しい雰囲気は微塵もなく、優しくておっとりとした生き物そのものである。宇和島市や松野町、四万十町界隈をぷらっと歩いていたら闘牛にも遭遇できてしまうかも!


普通に道端で散歩している牛さんに逢える (撮影・坪内政美)

その闘牛大会において、取組は10組程度。ということは、会場にはおよそ20頭が集まってくるのだ。会場は取組前からぴりぴりした空気が流れている・・・かと思いきやバックヤードの牛たちはこれまたおとなしくしているのだ。もちろん幾分、戦闘態勢になっているものの、闘い前の牛たちを見ることができる。数ある牛のうち、好みの牛を物色できるというわけだ。昔は賭博もしていたのかもしれないけれど、現在の闘牛大会はあくまで観光としての開催なので、賭事にはならないものの、どの牛がどんな闘いをするのか戦闘前のようすを楽しむのもアリなのである。牛にはちゃんと牛主さんが付き添っていて、背中をなでたり、出場ギリギリまで見守っている。1トンと1トンのぶつかり合いは、そりゃあもう迫力満点。美しい化粧まわしをした牛たちは、勢子(せこ)と呼ばれる男たちとともに土俵に入り、1頭1人が激しい闘いを繰り広げるのである。角を突き合うという本能に火がついた牛たちは、勢子のかけ声にあわせてボルテージが上がっていく。闘牛は、牛が逃げ出してしまうと負けとなり、最終的には闘争本能が強い牛が勝ちとなるのである。


勇ましく、時には大胆にぶつかる (撮影・坪内政美)

相撲で賞金がでるように、闘牛では「給金」がでる。通常は勝った牛が多くもらえるのだが、宇和島では、勝ち牛が4割、負け牛が6割となっている。これは、宇和島独特の伝統だということで、負けた牛主への慰めの気持ちの表れなんだとか。地域性がよくわかる風習である。さらにおもしろいのが、それぞれの一番が終わると、牛たちは土俵を引き上げていくわけだが、なぜか横綱戦が終わっても会場のにぎわいは続いているのだ。というのも、宇和島では横綱戦で勝った牛が再び化粧まわしを付けて土俵に入ってきているではないか。闘いを終えたばかりの牛はあぶない、という心配もよそに観客やら関係者から、どんどんと土俵の中に人が入っていき、牛をなでるは、触るは、ちびっこを背中に乗せて、記念撮影はするは、牛のまわりには人だかりである。これも宇和島ならではの文化で、勝ち牛に触れると運気が上がる、としてふれあうことを良しとしているのだ。かくいう私も、取材終わりに勝ち牛に乗せてもらったことがある。その背中は、まだ熱気が残っていて温かく、何より力強かったことを覚えている。

一度、足を運んでみてもらいたい宇和島の闘牛大会。闘いだけではなく、牛たちへの牛主の愛情とともにその苦労やドラマが一戦一戦に見え隠れするのもまた魅力だと感じている。


子どもたちも優勝牛に乗せてもらいご満悦 (撮影・坪内政美)


うあぁーうあぁー


宇和島闘牛大会
●開催日・令和2年1月2日 4月(第1日曜) 7月24日  8月14日  10月(第4日曜)
●開催時間・12時~15時頃
●入場料・大人・高校生、当日券 3,000円 (前売券 2,500円)中学生以下 無料
※団体・高齢者・障がい者割引あり
●交通・宇和島自動車バスセンター・JR宇和島駅前より無料バス運行される
●問い合わせ先・宇和島市営闘牛場 電話0895-25-3511

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